NHKさんから突然の連絡:「成都の小さな人気店を紹介してください」
— BS1スペシャルの最新企画 「突撃!ストリートシェフ@四川・成都」編が始動!
できれば多く紹介してほしい。小さく、美味しく、店主の思いがつまったお店。期限は3日後。
「へぇ?3日後!!!期限が近すぎーーーー!!!」と思いながら、スマホを持ってサッと出かけた。
成都ではお店が人気になると拡大路線をとるケースが多い
成都の人気レストランはもちろんいっぱい知っているが、その中で小さく、店主が独自で経営している(成都のお店は一旦人気になると店主がすぐ規模を拡大し、チェーン店にして、シェフではなく管理者として働く場合が多い)お店はあまり知らない・・・
「どうしようかなぁーー」と悩んでいたら、「1人で悩むよりはみんなで悩もう!」とひらめいて、成都現地で生まれ育った何人かの友達に「よく通う歴史の長い成都の代表的な美味しい蒼蠅館子を教えてください」とメールした。
そして「美味しそう!行ってみたい!」と選定した20店舗を1店舗ずつ訪ねて、味見をして、合格した(よく「四川料理にこだわりがあるね」と言われるから結構標準が厳しい)お店のオーナーさんと深く語り合って、いい感じのお店を8店舗ほどNHKさんに勧めた。
その後もオーナーたちと何回も話して、お店の看板料理の作り方から、店主の経歴、お店への思いなどいろいろと掘り下げて聞き取った。そして、NHKさんがいろんな検討を経ていよいよ5店舗の取材を決めた!
これで9月18日に放送された「突撃!ストリートシェフ@四川・成都」の番組に紹介されたこの5店舗は、本当にローカルの人々に愛される、食べなきゃ後悔する美味しいお店だと分かるでしょう。
この記事では、この5つのお店のシェフの自慢料理を大公開します!!ぜひ成都旅行の際にご参考にしてください!
1.蓉城老王家冒菜
(ロン・チォン・ラオ・ワン・ジャ・マオ・ツァィ)
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【オーナー名】王開明(ワン・カイ・ミン)
【お店の歴史】11年
【大衆点評口コミ】4.5/5
【営業時間】10:30~21:30
【住所】成都市武侯区新光路28号附1号
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お店のご紹介
冒菜 (マオ・ツァイ)は「一人の火鍋」と言われる成都の人気グルメ。火鍋より少し軽い豆鼓ベースのスープに具材を入れて茹でた後、タレやスパイス、薬味をかけて食べる料理。豊富な具材がお店に並ばれていて、お客は好きなものを取って店員に渡して、価格は具材の重量によって決められる。
蓉城老王家冒菜は、オーナーの王さんが母親から受け継いだお店。
王さんの母親は1990年代から、家族で住んでいる小区(団地)で屋台を出して、拉麺や氷粉、冒菜などのB級グルメを販売していた。母親が作った料理が非常に人気が高く、2010年頃、母が団地の一階の店舗を借りて、お店を始めた。王さんは2017年に8平米の小さなお店を引き継いで、母親と従兄弟の三人で回していた。
伝統的な家庭の味をこの小さなお店で伝えたく、お店の食材は今でも王さんのご両親が仕込んでいる。
そして、お店で笠をかけたり、四川の伝統的な竹椅子やテーブルを置いたりするなど、お客さんに「家」の雰囲気が感じられる環境を作りたく、王さんは細かく工夫した。
お店がますます人気になってきて、一日中ずっとお客さんで騒いでいるので、小区(団地)の住民の暮らしに影響が出ないように、今年の6月に昔のお店と100メール離れている道端に引っ越しした。
「11年間もやっていたお店だからちょっと寂しいけど、人は前向きにしなきゃいけないね。」と嘆きながら、王さんは今年成都のデパートや繁華街で5店舗も新しいお店を出した!!さすがーーーー!!!
王さんのお店はここまで若者に人気がある理由は、火鍋より便利で安く食べられる冒菜の魅力を、母親から教わった秘伝の味で完璧に演出したことに間違いない!では、一体どんな味なのか見ていきましょう!
シェフの自慢料理①:経典牛油冒菜(より取り15元~)
オーナーのお母さんが最初販売していたクラシックな四川冒菜の味。火鍋のような濃厚な味があるが、火鍋ほど脂っこくない。肉は歯応えがよく、花椒、塩など、最も簡単な調味料を使っているから味が自然。
シェフの自慢料理②:干拌冒菜(より取り15元~)
特製のラー油とソースで和えた冒菜が辛くて香ばしく、こってりしている伝統的な牛脂のよりさっぱりしていて、体に優しく、若者に人気が高い。
2.伍妹烤鴨
(ウー・メイ・カオ・ヤー)
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【オーナー名】楊蓉(ヤン・ヨン)
【お店の歴史】11年
【大衆点評口コミ】4.6/5
【営業時間】9:00~19:00
【住所】成都市錦江区水碾河路6号80栋附2号
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お店のご紹介
中華好きの方は、必ず北京烤鴨(北京ダック)を聞いたことがあるでしょう。「冒烤鴨(マオ・カオ・ヤー)」という料理は北京ダックの四川バージョン。
四川版北京ダックと言っても、実はアヒルの焼き方から食べ方までは北京ダックと全然違う。アヒルの皮はそこまでパリパリに焼かずに、食感よりスパイスの味がしっかり肉に染み込んでいることを重視。そして最後にアヒルの肉はカオヤーピンで包んで食べるのではなく、野菜と一緒に辛いスープに入れて軽く茹でてから食べる。
伍妹烤鴨はオーナーの楊さん(女性)と家族と経営しているお店。この目立たない住民街の中の小さなを店を11年間も続けてきた。そして、最近数少ない網紅(ネットでの有名人)に紹介されて、海外や他の省から成都へ来た観光客はみんなスーツケースを持って食べに来ている。今成都で一番人気な冒烤鴨さんと言っても言い過ぎではない。
私はお店に何回か行ってきたが、朝9時お店がオープンしてから夜19時閉店まで、一人で食べに来るお年寄りや、1時間ほど離れているところからわざわざテイクアウトを買って帰る若者など、一日中お客さんが絶えなかった。
楊さんに聞いたら、一日100羽以上売れるそうだ!!驚き!!!
シェフの自慢料理:冒烤鴨(半羽:54元 一羽:108元)
冒菜の汁をたっぷり吸い込んだ焼いたダックの皮が香ばしく肉が柔らかく、レンコン、じゃがいも、カリフラワーなどの野菜とのバランスもいい!
3.周厚雲鍋盔
(ヂョウ・ホウ・ユン・グゥォ・クゥイ)
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【オーナー名】周厚雲(ヂョウ・ホウ・ユン)
【お店の歴史】23年
【大衆点評口コミ】3.9/5
【営業時間】6:00~18:00
【住所】成都市彭州市軍屯路251号
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お店のご紹介
軍屯鍋盔(ジュン・トゥン・グゥォ・クゥイ)は四川省の人気B級グルメ、その歴史は三国時代(184~280年)まで遡る。蜀の武将である姜維が、現在の成都市彭州市の軍楽鎮あたりに駐屯していたとき、兵士が被っている金属製のヘルメット(盔)で生地を焼いて作った兵糧が原形と言われている。
「盔」の「鍋」で作った食べ物だから、「鍋盔」と名付けられたという。もちろん当時の「鍋盔」は肉はもちろん、塩まで入れていなかった。
関連記事:
四川食旅①軍屯鍋魁|発祥の地で巡礼修行!スパイスとパリサク食感がクセになる、鍋魁(グオクイ)の秘密
軍屯鎮生まれの周厚雲さんは、1980年代に師匠弟子入りで軍屯鍋盔を作る技術を教わり、軍屯鎮を出て自分のお店を出した。90年代に軍屯鎮に戻って、奥さんと「周厚雲鍋盔」を開いた。現在、成都周辺からわざわざ車で買いに来たお客さんが多く、海外から鍋盔作りを学びにきた生徒までいた。今まで周さんの生徒は2000人以上。
「今の生徒は全国だけではなく、世界中にいるよ。私たち鍋盔の手芸人は鍋盔の文化を広げる夢を持っているのだ。それと同時に生徒たちに生きていくためのスキルも教えてられて、とってもいいことではないか?」と周さんが言った。
シェフの自慢料理①:猪肉鍋盔(5元)
師匠に教わった伝統的な味。すべての年齢層が食べやすい五香味。外はカリカリ、中は柔らかくて美味しい。餡に使うお肉は豚肉の脂身とバラ肉両方を使っているから、歯応えがよく、脂気があって香りもよい。味の配合は、花椒粉、五香粉などの調味料をちょうどいいバランスで調和しているから複合的な味がある。
シェフの自慢料理②:牛肉鍋盔(5元)
牛肉鍋盔は麻辣(辛くて痺れる)味のため、若者に人気が高い。歯応えがよい牛もも肉を使用。二荆条という色鮮やかで香りがよく、辛さもあるものを使っている。花椒は茂汶大紅袍使用。麻と辣がバランスよく調味、これが四川の代表的な麻辣味になる。
4.炳林牛肉
(ビン・リン・ニィゥ・ロウ)
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【オーナー名】鄧偉(ドン・ウェイ)
【お店の歴史】35年
【大衆点評口コミ】4.4/5
【営業時間】11:30~14:00 17:30~20:00
【住所】成都市金牛区花照壁中横街456号尚熙庭苑405、407
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お店のご紹介
炳林牛肉は50品近くの牛肉料理を販売している牛肉専門店。オーナーの鄧さんのお爺さんが1986に牛料理の専門店を開き、35年が経過。鄧さんのお父さんとお母さんは2人とも耳が不自由な人で、2000年にお爺さんが亡くなった後、父親と母親がお店を引き継いで、2011年に三代目の鄧さんがお店を引き継いだ。
3年前から鄧さんが耳が不自由なスタッフを雇い始めて、現在お店に2人の障害者の店員が働いている。
心優しい鄧さんは、料理にもこだわりがある
「お爺さんの時代からあった料理の味をそのまま残したいが、現在流行っている料理も自分オリジナルの味で演出したく、日々調理方法をいかなる改善できるか研究し続けている。」
シェフの自慢料理①:一根牛(55元)
牛肉、牛タン、牛すじ、牛のしっぽなどの部位を青唐辛子や青花椒などで炒めた料理。牛の違う部位を使っているから豊富な食感があり、激辛好きが絶対好きになる味。
シェフの自慢料理②:豆花牛肉(27元)
牛肉なのにツルッとした食感があって不思議!絹豆腐より柔らかい豆花とコクのあるスープが美味しい!
5.黄記家常麺
(フゥァン・ジー・ジャ・チャン・ミィェン)
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【オーナー名】王暁琳(ワン・シャオ・リン)
【お店の歴史】5年間
【大衆点評口コミ】3.9/5
【営業時間】平日 11:00~20:00 / 週末 11:00~15:00
【住所】成都市錦江区東較場街127号附22号
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お店のご紹介
初めて行った時に看板までなかった極めて素朴なお店だった…オーナー夫婦はいつも忙しそうだった。
「こんな渋いところで、本当に美味しい拉麺ができるのか?」と疑ってしまうかもしれないが、黄記家常麺は周りの住民にだけではなく、成都の美味しいお店に一番詳しいタクシーの運転手さんたちにも人気が高いそうだ。
オーナーの王さん(女性)は昔会社の社員だったが、体調の原因で仕事をやめた後、自分の趣味だった料理でお店を開いた。
「小さく繁華街と離れているここでお店を開いたら、そこまで忙しくないでしょうと思ったけど、結局かなり忙しいなぁーーでもみんなに認められてうれしい。」
と王さんがとても満足しているようだ。
シェフの自慢料理①:鱔魚麺(35元)
タウナギと四川泡菜の組み合わせ。タウナギが柔らかく、四川泡菜が酸っぱくて食欲をそそる。特製のスープも味が濃厚でうまい!!
シェフの自慢料理②:回鍋肉麺(16元)
上質な黒豚の肩バラを厳選し、味だけではなく、食材も成都の庶民食堂で一番こだわっていると言える。日本の回鍋肉と違って、青唐辛子と豆板醤を活用した料理なので、青唐辛子のフレッシュな香と濃厚なスパイシーな味わいがある。
シェフの自慢料理③:双椒鮮兎麺(18元)
赤唐辛子、青唐辛子、生姜の刺激的な味を最大限に活かした一品。ウサギ肉に唐辛子と生姜の香りと辛さがしっかり染み込んでいるから、涙が出るほど辛い!!!でも美味しい!!!
まとめ
今回の取材を経て分かったのは、成都の美味しいお店が本当に多いことに気づかされる。番組ではこの5店舗しか紹介できなかったが、他の美味しいお店もたくさんあって紹介できないと辛い・・・
では次回は引き続き私が美味しい!!と思った成都のお店を紹介するので、またよろしくね!
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中川正道、1978年島根県生まれ。四川師範大学にて留学。四年間四川省に滞在し、四川料理の魅力にはまる。2012年にドイツへ移住。0からWEBデザインを勉強し、フリーのデザイナーとしてドイツで起業。2017年に日本へ帰国。「人生の時を色どる体験をつくる」をテーマに妻の中川チカと時色 TOKiiRO 株式会社を設立。
四川料理マニアたちがつくる四川料理の祭典「四川フェス」主催。過去動員数累計24.5万人。四川料理、しびれ、麻辣、マー活ブームに火をつけ中華業界を盛り上げる。