麻友子
About me
2005年に中国初渡航、2010年より中国一人旅を始め、短期長期含めおよそ50回ほど渡航を繰り返し2019年8月に四川省宜賓市移住。 転機は2018年夏、8年間勤めた会社を退職し叶えた、38日間中国周遊旅行。ビザのトラブルでしばらく四川省に滞在することになり、しかしその結果四川に恋をする。それまでは中国どの地域にも思いは平等だったが、もう四川以外考えられずに海を渡り、現在に至る。


 

街は春節ムードに

赤々とした丸ちょうちん、縁起文字を並べた真っ赤な春聯、急ぎ追い込み縁起の良い開店を目指す新規オープンのお店。

 

いよいよ春節、という雰囲気の高まってきた四川各地。新暦の新年を迎え一月下旬、街中は徐々に衣替えを始め、お祝いムードをそこかしこに感じるようになりました。

今年の春節は二月一日です。私が暮らす宜賓市では一月の十五日あたりから、大通りの街灯に巨大な赤ちょうちんが吊るされ、カラフルで個性的なデザインの楽しい春節ランタンが随所に準備され始めました。

 

 

私もまもなく冬休み。追い込みの息抜きに、気分を換えて街のカフェで仕事をするべく電動自転車を走らせ、長江大橋を渡ろうと向かいました。

すると車が激しく行き交う道路の端に、並んで腰かけお弁当を食べる中高年の男女がずらり。芝生に植わった木々に取り付けられるべく、積まれて山になったイルミネーションやちょうちん。完成まではまだまだかかりそう。

何気なく通り過ぎていくこうした春節飾りですが、一つひとつはみな、地元民の手によって用意されたもの。みんなでみんなの春節をつくっていく、そんな地方都市の温かみがあります。

 

 

清代建築の茶館で仕事をする

さて、どこで仕事しようか。迷いながら街をうろうろ走っていると、街路樹から商店街から、それはもう実もたわわに、むしろ多すぎではないかと思うほどの赤ちょうちんが吊り下がっています。

並ぶ店舗もすでに春節を迎えたかのような盛り上がりで、そんな賑わいの中、ふと一昨年と昨年の成都を思い出しました。

思えば一昨年の春節は数日、昨年は一か月まるまる成都中心部で過ごしたのでした。成都といえば大都会、その洗練されたセンスと上品さの中に交じり合う庶民気が大好きですが、思い返してみると今目の前にあるような雑多な春節模様を感じることは少なかったかもしれません。中国の春節、四川の春節といっても当然様々、各地で違った春節気分を味わってみるのもおもしろそうです。

 

 

パソコン作業が溜まっているため、やっぱり落ち着いた茶館がいいなぁと方向を変え、長江スタート地点にある冠英古街を本日のオフィスに決めました

冠英古街は少し前まで住民が昔ながらの生活を送っていた老街で、並ぶのはすべて清代建築。あれは二年前の春でした。新型コロナによる封鎖から徐々に外出ができるようになってきたあの解放期に大掛かりな改修工事が始まり、一年後の昨年の夏に観光エリアとしてオープンを迎えた場所です。

 

 

そこには同じく典型的な南方式四合院造りを茶館にリフォームした店があり、これがまた雰囲気抜群。店内には古き良き時代の宜賓を写した写真が展示され、四川ならではの竹椅子に麻雀席、四川や宜賓の銘茶を味わうことができるだけでなく、水煮牛肉、回鍋肉、毛血旺、干鍋、李庄白肉、燃麺といった四川料理、宜賓料理までが楽しめるのです。

それに観光客を受け入れる茶館としては珍しく、壺タイプの白酒も。蛇口のついた壺から直接グラスに注ぐもので、一両(ラーメン屋の小グラス半分ほど)で3元(約55円)という安さ。さらにこの茶館で嬉しいのは、時代劇さながらに浅い陶器で出してくれること。これが嬉しくて一人白酒を飲んでいたら店員さんたちはすぐに私を覚え、以降お茶しに行くたびに「ねぇ、今日はお酒飲まないの?」と代わる代わる尋ねられるようになってしまいました。

 

 

お茶席の前には瓦屋根の天窓。空からそそぎ込む光を受けて、石畳の苔は輝かんばかり。

と、その石畳の向こうにある劇台から、そんな風情を一蹴するかのような爆音音楽が始まりました。この茶館名物、四川伝統芸能の「変臉(ビエンリエン)」の始まりです。

 

 

変臉(日本語だとヘンメン)。その字の通りパッパッと魔法のように顔を変えていく、日本でも知られたお面の速変わり。かつては川劇もこちらも庶民がお茶を飲みながら楽しむ一般娯楽だったそうですが、時代を経て今となり、ほぼ完全に観光客向けのパフォーマンスへと変わってしまいました。

そのため成都にはあちこち楽しむ場所があるのですが、成都を離れ地方都市となるとなかなか目にする機会がないのです。この茶館は、四川省の隅にありながらも四川文化のハイライトを風情の中で楽しむことのできる、なかなかに「おいしい」隠れスポットだと私は思っています。

 

 

超ハイテンションのお面速変わりはあっという間。元気が出ない時でもこの音楽を聞きこのパフォーマンスを眺めれば、気分は爽快。何度見ても飽きない、癖になる魅力をもっています。

 

仕事なんてもう今日はいいや…

ところで私はこの茶館をオフィスとするべくやってきたのでした。しかし蓋つき茶は何度もお替りしたというのに、パソコンをまだ開きもしていない。街の春節モードといい、魅惑のお面速変わりといい、「仕事なんてもう今日はやめちゃいなって」と語りかける悪魔のささやき。やはり、家でおとなしくしているべきだったのでしょうか。

 

 

お茶館を出て冠英古街を抜けると、そこはもう長江。左手から岷江が、右手から金沙江が、遠路はるばる流れついてここで合流します。

ここからの眺めが、もしかしたら宜賓でもっとも好きな風景かもしれません。大河というのは通常どちらかの岸から横に眺めるものでしょうが、ここは長江を先端から眺めることができるのです。私の目の前から長江が、その先に滔々と流れてゆくのです。

 

するとすぐそばに、以前はなかった小屋を見つけました。

──長江宜賓号チケット売り場。

長江を近距離で往復する遊覧船ができたのは、やはりコロナ封鎖からの解放期だった一昨年の夏頃でした。どうやら販促のためか、ここにチケット売り場ができたようです。

「仕事なんてもう今日はやめちゃいなって」と、また誰かの声が聞こえたような。

 

長江を遊覧する長江宜賓号に乗船

 

長江宜賓号のコースは三種類です。

・李庄コース

(毎土・日、往路10時出発—復路15時出発、片道所要約60分)

・三江親水コース(昼間)

(毎月~金、14時半出発、所要約70分)

・三江親水コース(夜景)

(毎日、19時半出発。土曜日は加えて20時45出発。所要約50分)

 

李庄コースは宜賓を代表する観光地である李庄を観光できる往復便ですが、三江を有する宜賓において車での移動が不便だった李庄観光が、このクルーズの誕生で劇的に便利になりました。

しかし今私が乗れるのは、これ。三江親水夜景クルーズです。昼間よりも船上時間は短いものの、38元の昼便に比べやや高い58元。それでも悪くないお値段でしょう。

 

 

船に上がってみると、ホテルかと思うような立派な造り。大理石風仕様の階段の先で巨大な長江図が観光客を出迎えます。

長江を一筋の龍に見立てたデザインとなっていて、尾が宜賓、つまり長江のスタート。そこから瀘州、重慶、宜昌、武漢、九江、南京、蘇州、最後は上海で、龍は頭部を大海に放ちます。

世界第三位の長さと称される長江は源流から下る金沙江を含めての呼称ではありますが、世界に知られる「長い江」の名がここから始まる感慨は深いものです。先ほど眺めた長江の先端から、上海まで。およそ2800㎞もの長さをもつこの龍のなんと巨大なことでしょうか。

 

 

デッキに上がると、並べられているのはいかにも四川といいたくなるようなお茶席でした。

一つひとつにナッツなどを入れる受け皿と灰皿があり、短い時間にもお茶を楽しむ四川人の性格が表れています。振り向けば売店。売店にはお茶の用意だけでなく、一般的なジュースやビール、お菓子やおつまみなど豊富な品揃え。出航直前ではなく早くから船を開放しているので、早めにきて先にお茶会を開いて出発を待つ、そんな楽しみ方もできそうです。

 

 

19時半、定刻通りに長江宜賓号は出発しました。ポーッと上がる汽笛は、まるでこれが長い旅路の始まりであるかのような興奮を与えてくれます。

埠頭は長江出発点よりやや北側、岷江の末端です。船が出発して間近に通り過ぎていくのは、先ほど立ち長江を眺めた広場。あのすぐ裏手が、先ほどお茶を楽しんだ冠英古街です。

その広場の左手より流れ来るのが、長江の上流にあたる金沙江。手前に見えるのは金沙江最後の橋、南門大橋。その向こうに幾重にも鉄橋が重なる様子は、宜賓の歩んできた歴史を伝えるとともに非常に美しい情景です。

 

 

船は長江に入りました。

右手に通り過ぎていくのは、つい数年前までは建物もろくになかったエリア。現在は一帯開発が進み、高層マンションが近辺合わせ三桁に及ぶ規模で増えています。マンションができ上がれば次々に住人が入り埋まりますから、数年後の宜賓は見違えるほどの変化を迎えていることでしょう。

現在このマンション群は、これでもまだ建設中なのです。さらに手前に見える高層ビルは、高さ288m、57階建てとなる計画で、宜賓で最も高い建築物となる見込みです。完成した暁には、この長江クルーズの景観スポットとなっているかもしれません。

 

 

船はゆったりと進み、やがて長江で初めに架かる宜賓長江大橋へ。

私がいつも行き来している橋なのですが、下からくぐってみるとやはり迫力のある高さ。高所恐怖症の私はここを自転車で通ることができず、1㎞ほどの橋幅をいつも降りて歩いてしまうのです。

しかし大河と共に暮らす人々にとって、橋の建設と発展はイコールで繋がれるといっても過言ではありません。この長江大橋のすぐ先に昨年、巨大な塩坪壩長江大橋が完成。またその先にも、臨港長江大橋の完成が期待されています。

 

 

船は長江大橋を過ぎてUターン、幻想的に輝く白塔山のライトアップを右手に眺めながら来たコースを戻り、ぴったり50分のクルーズは終わりを迎えました。

 

 

灯りのともった春節ランタンを眺めながら、早く暖まろうと帰路。先ほど下をくぐった長江大橋を渡りました。お昼前には大勢の住民が春節の準備作業をしていた場所です。

すると、とても今日中に完成するとは思えなかった春節のイルミネーションや飾り物。それらがすっかり完成し、まるでどこかの観光地のようになっていたのです。

まだたくさん残っている住民たち。ようやく帰宅だね、と思っていると10t車がやってきました。その巨大なトラックの積み荷は、なんとすべて大量の花。親父さんもおばさんもみな競うように花を受け取り、完成したイルミネーションの下に花を一つひとつ敷き詰めていきます。

 

────もう間もなく、春節。

 

 

 

~店舗情報~

那年茶館

宜賓市翠屏区冠英街10号院

営業時間:10時~20時

演出時間:火曜日~日曜日、12時、14時、16時、18時半(追加料金なし)

お茶:10元~38元(蓋碗茶は碧潭飘雪)、食事メニューあり

 

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中川正道、1978年島根県生まれ。四川師範大学にて留学。四年間四川省に滞在し、四川料理の魅力にはまる。2012年にドイツへ移住。0からWEBデザインを勉強し、フリーのデザイナーとしてドイツで起業。2017年に日本へ帰国。「人生の時を色どる体験をつくる」をテーマに妻の中川チカと時色 TOKiiRO 株式会社を設立。
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