About me
2005年に中国初渡航、2010年より中国一人旅を始め、短期長期含めおよそ50回ほど渡航を繰り返し2019年8月に四川省宜賓市移住。 転機は2018年夏、8年間勤めた会社を退職し叶えた、38日間中国周遊旅行。ビザのトラブルでしばらく四川省に滞在することになり、しかしその結果四川に恋をする。それまでは中国どの地域にも思いは平等だったが、もう四川以外考えられずに海を渡り、現在に至る。


 

10月を迎えもう半ば、肌寒い風が吹くようになりました。

 

先月迎えた新学期。日本の学校が4月に新年度を迎えるのに対し、中国では9月に新しい学年を迎えます。日本語教師として宜賓にやってきたのは去年の8月。早いものでちょうど一年が経ちました。

 

初めの授業はオリエンテーション、その中でもどうしようか迷っていたのは、新2年生でした。わが校では1年生はまず別キャンパスで学び、2年生からようやく宜賓でのキャンパスライフが始まります。訊いてみればみなつい数日前、学校に到着したばかりとのこと。

 

宜賓出身の学生は2名ほどで、残りの半分超が四川省各地、その他は他省という出身地構成。

 

「私は日本人ですが、宜賓生活に関してはみなさんよりも1年先輩ですね」

 

そんなふうに大得意で、宜賓で押さえるべきポイントをプレゼンすることにしたのでした。

 

入学して半年で、コロナウイルス対策によりオンライン授業となってしまった新2年生。まるで新入生のような初々しさで、「おー!」だとか「えー!」だとかざわつきながら反応してくれ、初対面に大緊張していた私の心もおかげでほぐれました。

 

「実は夏休みに、宜賓を旅行してきたんです」

「お~!」

 

スクリーンに流したのは夏休み、23日間にも亘る周遊の後半、宜賓東南部を回った時の写真でした。

前回は旅行の前半に巡った自貢についてご紹介しました。あれから日は経っておりますが、本日はその続き、この宜賓旅行話を通して、新2年生だけでなくみなさんにも宜賓の見どころをお届けしたいと思います。

 

宜賓には「四つの海」がある

宜賓には「四つの海」があるといいますが、それが何かみなさんご存知ですか?

 

まず一つは、「酒の海」。宜賓は白酒の産地です。

もう一つは、「茶花の海」。お茶の花で有名な場所があるのですが、今回の旅はシーズンがずれるために訪れておらず、また次の機会に。

 

そして、残りの二つが「竹の海」「石の海」

今回の宜賓周遊は正しく、この竹の海と石の海を巡ったものでした。

 

宜賓市東部の江安県で名物の竹荪(キヌガサタケ)を食べる

旅行後半、自貢市から南下しまずは宜賓市東部の江安県へ、そこから西南に隣接する長寧県を訪れました。この一帯はもうまるごと竹と石の海です。

 

いたるところで目にした「竹海」の文字。そこら中で売られている竹海特産の代表は、竹荪(ジュースン)という竹林に生える菌類の乾物です。

竹荪(ジュースン)

 

網のような筒のような不思議な外観で、江安と長寧ではこれを使った竹荪麺や火鍋を楽しみました。スポンジのようにスープを吸いこむので、辛いスープに使うのはちょっときついかも…。鶏だしスープによく合う菌類です。料理ができないくせについ一袋お土産に購入してしまいました。

 

店名:竹海鮮牛坊

場所:宜賓市長寧県財富広場10号楼2階

 

竹荪(ジュースン)が入った麺

 

店名:長興麺館

場所:宜賓市江安県夕佳大道177号

 

長寧からは宜賓きっての観光地、竹の海どころか竹の大海、「蜀南竹海」という竹林自然景区へ行くことができます。…が、今回私が向かったのはそれよりさらに南部、長寧南の端にある梅硐竹石林(メイトンジューシーリン)。

 

梅硐竹石林へ行き、四川名物の「凉糕」を食べる

 

小型バスに乗り一時間、まずは双河鎮へ。そこでバスを降りバイクタクシーへ乗り換え、竹石林のある梅硐鎮へ向かいました。なんて気持ちの良いバイクドライブ。のどかな農村風景の向こうに迫力ある山々がゆっくりと流れていきます。

 

梅硐鎮でまたバイクタクシーを乗り換え、高度を上げた山間ドライブを思い切り楽しみ到着した竹石林。そこはまるで忘れ去られたように静かな場所でした。

 

 

なるほど竹石林とは言い得て妙。不思議な形状をした岩と竹が、絶妙な距離感で共存しています。ここは5億年前には一帯海の底で、大地の隆起により陸となったあと浸食により生み出されたカルスト地形です。

 

 

観光客どころか管理人もいない放棄されたような場所でしたが、なんだか自分だけの秘境を見つけたような気分になり、ついつい長居して双河鎮からの最終バスに乗り遅れそうになってしまいました。迎えに来てくれた梅硐鎮のバイタク親父さんは、「間に合わなかったら長寧まで送るから安心しろ!」と温かい言葉。山道をショートカットして、双河鎮まで間に合わせてくれました。

 

さてこの双河鎮、地味で小さな集落ですが、実はちょっと有名なんです。

 

四川で定番、の甘味「凉糕(リャンガオ)」の発祥地が、実はここ双河鎮。時間があれば散策したいなと思っていましたが、来てみれば集落のほとんどが足場の架かった工事現場。その合間に、陰になってぽつりぽつりと凉糕専門店が見えましたが、これではお客さんなど来ようはずもありません。

 

凉糕を生んだという清らかな湧水をもつ井戸、葡萄井の前を通りがかり納得。中華式建造物の輪郭を持つ足場に、建設中のチケット売り場。今ここは、凉糕を使って観光地化を図った大変化の途中なのでした。

 

 

それでもせっかくなので食べてみたい凉糕。長寧に戻りお店に入ってみました。

 

なんだか日本の駄菓子屋さんを思い起こすような小さなお店で、おばあちゃんが「なんの味にする?」と声をかけてきます。

 

イチゴ味、葡萄味、バナナ味…、子供心を呼び起こすようなバリエーションの中で、気になりつつも手が出せなかったのは麻辣味。凉糕って一応甘味なのですが、麻辣味ってどんなものなのでしょう。

 

 

結局頼んだのは、プレーン。たったの4元(約60円)です。米粉から作られたもっちりとしたババロアのようなお菓子。冷たい凉糕にかかるのは、ひとすくいの黒蜜だけ。

 

正直にいえば味はほとんどなく、黒蜜の甘みともちもちとした食感を楽しむ素朴な甘味です。それなのに、どうしてこんなに満たされた気分になるのでしょうか。

 

古いものがどんどん失われていく現代。日本ではそうしたものが一種の懐かしブームとなっていますが、中国の魅力というのはそれが復刻ではなく現役で生きていること。それでも急速に進む発展を眺めると、こうしたものもやはりやがては消えていってしまうのかなぁ…。そんなことを考えながら、一口。ああ、なんて贅沢な4元なんだろう…。

 

店名:凉糕世家

場所:宜賓市長寧県青年路一段185号

 

長寧県から興文県へ移動、石の海へ

 

長寧県を発ち、最後に向かったのはさらに南部、興文県でした。

 

興文には宜賓四海のひとつ、「石の海」を代表する興文石海(シンウェンシーハイ)と呼ばれる景区があり、そこへ行ってきました。

県区からバスに乗るとすぐに奇怪なカルスト地形が姿を現し、高まる期待の中で踏み込んだ石海。

 

内部はあまりにも広く、敷地内を走る観光用電動カートに乗り移動します。夫婦が寄り添うように見える夫妻峰。熊と亀がじゃれ合うように見える小岩。迷路のように岩山に架けられた遊歩道。もう眺めたらきりがありません。

 

ああ、もう最終バスの時間だ…。そう思いながらも、チケット代に含まれているエレベーターに向かってみました。

 

 

エレベーターとはどういうことかと思えば、この面積20万㎡もの巨大な天然の窪みを下るものでした。下ってみればそこには真っ暗な入り口が、そしてその先には巨大な鍾乳洞が奥へ奥へと続いていたのでした。

 

 

あまりの広さ高さに言葉を失いました。見渡してみればところどころに瓦礫の山。ここは日中戦争期に、重慶から軍事工場が移転された場所だったのだそうです。確かに、工場が一つどころか二つも三つも建ちそうな広さでした。

 

 

まだ奥があるの?まだあるの?そんなふうにきりがない程に鍾乳洞は奥へ続き下っていきます。後から知ったことですが、この鍾乳洞は中国で観光客に開放されているものの中で最大規模、発見されているものの中では第6位の長さを持つそうです。

 

全長10.5㎞のうち、観光客が進めるのは4.5㎞。奥まで行くと、幻想世界の極みのような空間が待っています。

 

無限ループのように色の組み合わせをふわりふわりと変えていく、煌びやかなライトアップ。間もなく閉館時間だというのに、立ち去ることができませんでした。

 

旅で出会った豆花烤魚のおいしさ

 

 

興文は23日間周遊、最後の旅先でした。ここでは四泊しましたが、実は四晩連続で同じお店に通ってしまいました。豆花烤魚(トウファカオユー)を看板に掲げるお店で、魚よりも存在感を発揮する豆腐たっぷりの烤魚がおいしかったのはもちろんですが、他のお店に行く気を失わせたのはお店の人たちの温かさ。

 

「ねえねえ、明日も来る?」

 

仕事の合間に私のテーブルに来て腰かけては、休憩にアイスを食べながら興味津々で話しかけてくれるおばちゃんスタッフたち。それから私が惚れてしまったのは、くるくると動き回りながら元気よく働く女の子。

 

30歳にしてこのお店のオーナーである彼女は、凛とした美しいオーラを放っていました。

 

最後の晩は彼女たちや、また店員の家族までが、冷たくておいしい米酒で何度も乾杯をして見送ってくれました。

 

店名:新苗城豆花烤魚

場所:宜賓市興文県光明大道 海韵假日酒店向かい

 

旅を終えて

 

こうして終えた、23日間の旅行。自宅へ戻ってからは気持ちを切り替え、寝る間もなく新学期の準備に追われる日々。不安もあったし、緊張もしたし、それでもようやく初授業を迎えることができ、新しい生活がまたスタートしました。

 

私が映したスクリーンをスマホで撮影する学生たちに。

 

「今度はみんなと一緒に行こうね!」

「はい!」

 

別れがあればまた、出会いもあり。かわいい学生たちと奮闘する日々が始まりました。

 

 

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中川正道
中川正道、1978年島根県生まれ。四川師範大学にて留学。四年間四川省に滞在し、四川料理の魅力にはまる。2012年にドイツへ移住。0からWEBデザインを勉強し、フリーのデザイナーとしてドイツで起業。2017年に日本へ帰国。「人生の時を色どる体験をつくる」をテーマに妻の中川チカと時色 TOKiiRO 株式会社を設立。
四川料理マニアたちがつくる四川料理の祭典「四川フェス」主催。過去動員数累計24.5万人。四川料理、しびれ、麻辣、マー活ブームに火をつけ中華業界を盛り上げる。