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バンコクの新中華街「フアイクワン」
タイ・バンコクのニューチャイナタウンとして注目を集めつつあるフアイクワン。ここには、中国大陸的な料理を提供するお店がたくさん集まっています。もちろん四川料理屋もあります。現地に1年間滞在した筆者がアフターコロナへ移りつつあるフアイクワンの状況ならびに四川料理を出してくれるおすすめのお店をお伝えします。
みなさま初めまして。大阪経済大学というところで教員をしております藤井大輔と申します。2021年9月より1年間、タイのバンコクで在外研究をしておりました。
その際に、フアイクワンという中国人が多数住む一方で、ほとんど日本人がいないというなかなかレアなエリアに住んでおりましたので、このフアイクワンにある四川料理屋さんについてレポートをしたいと思います。
フアイクワンはどんなところ?
ところで、このサイトの読者のみなさんは、そもそも中国の記事が多い美味四川でなぜバンコクの四川料理のレポート?そして、フアイクワンってどんなところだ?と思われる方が多いでしょう。しかし、このフアイクワン、実はタイの中華料理好き、そして四川料理好きにとって注目のエリアとなっているのです。
バンコクのチャイナタウンというと、ヤワラー通りが有名だと思います。日本で売られているバンコクのガイドブックにもヤワラー通りはたいがい掲載されていると思います。その一方で、ガイドブックにはフアイクワンに関する記載はほとんどないと思います。
このフアイクワンの最大の特徴は、上述のとおり、中国人が集住しているところです。そうなると、必然的に中華料理屋も多くなります。そして、ここにいる中国人の多くは、比較的最近、中国各地から来た人が多いので、中国各地の料理屋さんがあります。
この点は、200年以上前から広東や福建からの移住が進んでいたヤワラー通りとは異なります。ですので、少し大雑把なイメージかもしれませんが、
ヤワラー通りが横浜の中華街や神戸の南京町とすれば、このフアイクワンは西川口ということになります。関西の方なら、大阪ミナミの島之内といえばピンと来るのではないでしょうか。
また、フアイクワンは、中華料理好きのタイ人にも注目のエリアとなっています。一部の火鍋屋さんや点心屋さんは多くのタイ人で賑わっています。フアイクワンエリア内でも、なぜか中国人が多いお店とタイ人が多いお店とすみわけができている気がしなくもないですが、その辺はSNSなどでのマーケティングの違いがあるのかもしれません。
このフアイクワンの位置は、バンコクの中心地からは少し北にあります。とはいえ、日本人駐在員が多く集まり、観光客も多いバンコクの中心地、スクンビット・エリアからでもアクセスは悪くありません。地下鉄(MRT)に乗ると、スクンビット・エリアにあるアソーク駅からフアイクワン駅まではたった4駅で、15分もかかりません。
中心地からほんの少し北にあるという絶妙な距離感も西川口っぽいですね。なお、タクシーに乗ってもスクンビット・エリアから簡単にアクセスできますが、時間帯によってはフアイクワンへの道が渋滞するのでMRTの利用をお勧めします。
フアイクワン駅周辺4つのおすすめ四川料理店
そのフアイクワン・エリアの中でも、特に中華料理屋さんが多いのがMRTフアイクワン駅からフアイクワン区役所(Huaikhwang District Office)方面へ東に伸びるプラチャーラートバムペン通り(Pracha Rat Bamphen Rd.)です。
ここからは、プラチャーラートバムペン通り周辺のお店を中心に、個人的に気に入っている四川料理を出すお店を紹介したいと思います。
①渝九門老火鍋(7 Alley Hot Pot)
「渝」の字が含まれたお店の名前からして、もう重慶火鍋屋であることがすぐにわかるでしょう。なぜ、私がこのお店がお気に入りかというと、ごく普通に四川の街中にある感じの火鍋屋と同じだからです。普通の街中の火鍋屋なのでネイルやマッサージのサービスなどはありません。そして、私の家からも徒歩数分でした。こんな近所に火鍋屋があるなんてすばらしい環境です(すみません、個人的な話で…)。
美味四川の読者には、今さら説明をする必要はないと思いますが、ここでいう火鍋は、具材を赤い牛脂の鍋でシャブシャブするあれです。もちろん、紅鍋オンリーでもいいですし、鴛鴦鍋もあります。
つけダレは、胡麻油、オイスターソース、刻みニンニク、パクチー、塩、味の素などを自分の好みで作ってください。鍋の具材も、鴨の腸や舌、毛肚、海帯、豆皮などなど火鍋に欠かせない具材がきちっと揃っています。あの平べったいもちもち川粉もあります。
ここは、高級店ではないので普段使いもできますが、店内はそこそこの清潔感もあります(タイではこれ大事)。
きちんとデータをとったわけではないですが、お客さんも8割以上が中国人かと思われ、料理の注文も中国語でできます。ちなみに他のお店もそうですが、ここフアイクワンでは中国語が話せると生活にそれほど困りません。ただし、日本語は通じません。とはいえ、漢字が読めるなら、大丈夫です。
オーダー方法は、四川の火鍋屋でもよくある、メニュー一覧の用紙にチェックをつけて注文するタイプなので、具材の名前を予習していけばなんとかなります。
お店へのアクセスも良く、MRTのフアイクワン駅から歩いて5分ほどで着きます(地図①)。プラチャーラートバムペン通り(Pracha Rat Bamphen Rd.)を東に向かい、そこからパイサン路地(Soi Phaisan)に入り、北に1分ほど歩いていけば、右側にお店が見えてきます。
②「康福焼烤」四川の味に最も近かった串焼き
お店の名前に含まれている焼烤は中国式の串焼きのことです。フアイクワンには、何軒か焼烤のお店があるのですが、このお店でも、軒先の炭火コンロで焼いた串を出してくれます。そして、自分が食べたお店のなかではここが最も四川の味に近いかなと思っております。
また、焼烤以外にさまざまな一品料理も出してくれます。茶葉の炒め物など雲南料理っぽいメニューもありますが、回鍋肉、魚香肉絲、辣子鶏などの四川料理もそろっています。
回鍋肉は、残念ながら四川のように葉ニンニクは使われていないものの、代わりにタイでは豊富にある、ししとうのような生唐辛子が使われており、これはこれで美味しいです。お肉もちゃんと下茹でした皮付きの豚肉の薄切りが程よくクリスピーに仕上げられており、良い感じの豚の脂の味が楽しめます。
また、個人的にこのお店のおすすめだと思うのが、田鶏(カエル)を使った各種メニューです。
たとえば、水煮田鶏。ご存知かと思いますが、四川料理の水煮○○は、日本の水炊きのようなあっさりとしたものではありません。四川の水煮○○は、一通り辛いスープで煮ておいた具材に、唐辛子、ニンニクをかけて、さらにその上に熱した油をぶっかけるという料理です。水煮田鶏はそのカエル・バージョンとなっています。
なぜこのお店のおすすめかというと、カエルの鮮度が良いからです。店先に水槽が置いてあるのですが、その中でカエルが泳いでいるのです。そして、そのカエルを料理する。鮮度が良いからか臭みは全くなく、弾力のある白身のお肉はまるでフグをたべているような感じです。こちらのお店もやはり中国語・タイ語可です。
場所は、フアイクワン駅からプラチャーラートバムペン通りを東へ徒歩10分ほど進んだところです(地図の②)。このお店はプラチャーラートバプラチャーラートバムペンで、簡単に見つけることができるでしょう。
③四川的な麺を出してくれるお店、鐘鐘麺
このお店は、これまた四川の街中にありそうな小さな麺屋さんです。店内には重慶の階段やケーブルカーなど町の写真が飾られています。
主なメニューは、牛肉麺、肥腸酸辣粉、豌豆雑醤麺などです。いかにも四川的なラインナップです。
牛肉麺は、煮込んだゴロゴロとした牛肉、表面に赤い油がびったし張ったスープ、トッピングはパクチーです。底の方にはザーサイが隠れていていいアクセントを出してくれています。麺は、四川でよく見る小麦の白い麺を使っています。もう完璧です。
肥腸酸辣粉は豚モツ入りの粉(フェン)です。こちらはフェンなので、いものでんぷんで作った麺です。スープも辛さに加え、中国酢も効いたテイストです。実際のカロリーなどはわかりませんが、ダイエットした気分になれます。
豌豆雑醤麺、いわゆる豌雑麺は、汁なしの雑醤麺に良い感じに茹でられた豌豆がトッピングされたものです。もうここは「豌雑」から名前をとってワンダーランドならぬワンザーランドと呼んでよいでしょう。
いずれの麺もフェンとの入れ替えが可能ですし、追加のトッピングもできます。また、マーとラーの調節も可能ですので、好みやその日の気分によってアレンジしてみるのも良いでしょう。
こちらのお店も中国語とタイ語が併記されたメニューがあります。また店員さんも中国語とタイ語どちらも可能です。なので、タイ語が話せなくてもなんとかなります。
場所は、フアイクワン駅からプラチャーラートバムペン通りを東へ徒歩10分ほど進み、南側の路地を少し入ったところになります(地図の③)。プラチャーラートバムペン通り沿いに小さな看板が出ているのでそれを目印に路地に入れば、右側に見えてきます。
④CQK Hotpot(磁器口火鍋)、高級ラインのお店が集まるティアムルアムミット通りにある
さて、ここまで紹介した3軒のお店は、いずれも町の食堂という感じのお店です。また駐車場もありません。徒歩圏内に住んでいた私としては普段使いをしやすいので助かっていましたが、場合によっては個室があるようなもう少し高級感のあるお店で食事をしたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そういう方は、MRTで一駅隣のタイ文化センター(Thailand Cultural Center)駅近くのティアムルアムミット通り(Thiam Ruam Mit Rd.)沿いのお店へ行かれると良いかもしれません。こちらはフアイクワン駅周辺に比べるとお店の数は少ないものの、駐車場も備えた少し大きめの中華料理店が集まっています。
そこで、紹介するのが4軒目のCQK Hotpot(磁器口火鍋)です。CQKの由来は、磁器口で、重慶の近くの古鎮です。私は行ったことがないのですが、中川総裁いわく良いところだそうです。
このCQK Hotpotは大きな火鍋屋さんなのですが、いつもお客さんがいっぱいで、ピーク時間帯には多くのお客さんが店の前で並んでいます。こちらのお店は1軒目のお店より高級感があり、個室も完備しております。その分値段も少し高めですが、びっくりするような値段ではありません。接待など大事な人との食事だと個室を予約することをお勧めします。駐車場も完備しています。
メニューは、やはり典型的な火鍋で出てくるようなものばかりです。が、私が四川で食べたことがないメニューとして、ワニの肉がありました。ちなみにタイではワニ肉は、頻繁には食べないものの、それほど珍しいものではありません。クロコダイル・ファームもあります。
タイでは、一時豚の病気が流行し、豚肉の価格が上昇していました。そのときに豚肉の代替の肉としてもワニ肉が良く食べられていました。お味はどちらかというと豚というよりは脂身の少ない鶏に近い気もしますが、身が程よくしっかりとしたお肉で、火鍋とのマッチングも良かったです。
アクセスですが、こちらのお店の最寄り駅は、フアイクワンから一駅隣のタイ文化センター駅となります。駅からティアムルアムミット通りを韓国大使館がある方向へ歩いていくと5分で着くような距離です。大きなお店なので迷うことはないでしょう。ちなみにこのお店がある通りは他にも湖南や広東など各種の中華料理を出すお店が集まっています。
以上が、私が実際に行ったことのあるおすすめのお店となります。いずれのお店も2022年8月末時点で繁盛していましたので、コロナの荒波を乗り越えたと思っていいのではないでしょうか。
最後に、アフターコロナなフアイクワン
さて、コロナというワードが出てきたところで、最後にフアイクワンのお店めぐりで留意しておかなければならない点を挙げておきます。Google Mapの情報のアップデートが追いついておらず、閉店、開店の情報があてにならないことがあります。
2020年初頭から全世界で流行した新型コロナウイルスは、タイ経済、特に観光や飲食などのサービス業に深刻な影響を与えました。
私が2021年9月にバンコクに到着した際には、中国本土のような15泊16日のホテルでの隔離がありましたし、夜間外出禁止令や酒類提供禁止令も出ておりました。その結果、閉店してしまったお店も少なからずありました。フアイクワンでも閉まったままのシャッターに「租」と書かれた張り紙も良く見ました。また、店内提供をあきらめデリバリー専門に転換したお店もあるようです。そのため、Google Mapで検索し、その場所に行ってみたらお店がなかったということも何回かありました。
まぁ、事前に目星をつけていたお店がなくなっていたとしても、このフアイクワンには雲南料理、湖南料理、蘭州ラーメンなどなど多数の中華料理屋さんがあります。最近(2022年8月末時点)は、新規開店に向けて内装工事をしている中華料理屋さんも何軒か見かけました。タイは、すでにアフターコロナモードに入っております。わざわざフアイクワンまで来たものの、中華料理を何も食べられずに帰えらざるを得ないということはないでしょう。
もしかしたらこの記事をきっかけにフアイクワンを訪れる方がいるかもしれません。そして、みなさまがおすすめする新たなお店が現れるかもしれません。私もまた来年仕事で行く予定ですので、新店情報など教えていただけますと幸いです。
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中川正道、1978年島根県生まれ。四川師範大学にて留学。四年間四川省に滞在し、四川料理の魅力にはまる。2012年にドイツへ移住。0からWEBデザインを勉強し、フリーのデザイナーとしてドイツで起業。2017年に日本へ帰国。「人生の時を色どる体験をつくる」をテーマに妻の中川チカと時色 TOKiiRO 株式会社を設立。
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